2025年04月22日
スイス製腕時計に対するアメリカの追加関税により、
アメリカ政府が新たに発動したスイス製品への追加関税を受け、一部の時計ブランドがアメリカ市場向けに価格を引き上げ始めている。英国時計ブランドとしては最大の売上を誇るクリストファー・ウォードは、スイスで製造される自社の腕時計をアメリカへ輸入する際に31%の追加関税が課されることを顧客や取引先に通知し、その負担は消費者側に転嫁されることになると明らかにした。
スイスの大手時計ブランドのなかにはアメリカ国内の販売店に一定の在庫を確保しており、当面は価格への影響を回避できるケースもある。しかしクリストファー・ウォードのように注文を受けてから商品を出荷するダイレクト・トゥ・コンシューマー(DTC)型のビジネスモデルを採用するブランドでは、即座にコスト増を価格に反映せざるを得なかったと、同社のCEOは説明している。
クリストファー・ウォードのCEO、マイク・フランス氏。
「市場と状況が落ち着くにつれて、需要が減少することは避けられないと考えています」と、クリストファー・ウォードの最高経営責任者、マイク・フランス(Mike France)氏はインタビューで語った。
コストパフォーマンスに優れたモデルを展開する同ブランドにとってアメリカは最大の市場であり、昨年出荷した約4万本の時計のうち45%以上の販売をアメリカが占めている。フランス氏はアメリカの消費者にとっての負担増は“定価の値上げ”というよりも、”アメリカ政府によって課された税金の適用”だと説明する。
「我々の基本的な販売価格は一切変わっていません。追加でかかるのは“税金”です。関税というよりも、アメリカ政府が課した販売に対する新たな税金と言ったほうが実態に近いと思っています」と述べ、続いて「その負担をブランド側で引き受ける余裕は、正直なところまったくありません」と付け加えた。
クリストファー・ウォードとseconde/seconde/による最新コラボモデル、ザ・トゥエルブ・スネーク(The Twelve Snake)。
マイク・フランス氏らは、クリストファー・ウォードをイギリス最大の時計ブランドへと成長させた。同ブランドはオンラインを通じた直接販売を展開し、チャイミングウォッチのベル カントや、一体型ブレスレットのスポーツウォッチであるザ・トゥエルブなど人気モデルを多数擁している。製造原価の最大でも3倍以内という手ごろな価格設定も、同ブランドの特徴だ。
一方、ロレックスをはじめとするスイスの大手時計ブランドは、先週発表された新たな関税政策への対応についてまだ正式な発表を行っていない。この関税は一度4月9日(水)から本格的に適用され、100以上の貿易相手国を対象とするアメリカの新たな貿易政策は世界中の株式市場を混乱させるほどの波紋を呼んだ。その後ほとんどの国を対象とした相互関税の90日間停止という発表がなされ、これにより各国は交渉の猶予を得た状態だ。なお、スイスのトップブランドのひとつであり、ロイヤル オークで知られるオーデマ ピゲは関税への対応を検討するための社内タスクフォースを立ち上げた。
「トランプ大統領による関税政策の発表を受け、社内タスクフォースが調整計画の検討を開始し、あらゆる選択肢を視野に入れている。最も重視しているのは、我々のチームと顧客を支援することだ」と、オーデマ ピゲの広報担当者は述べた。
クリストファー・ウォード トゥエルブ X
アメリカはスイス製腕時計にとって最大の市場であり、2024年には約44億スイスフラン相当(2024年のレートで約7568億円)の腕時計がアメリカ向けに輸出された。これは2023年より約5%の増加となっている。しかしこうしたスイス製品に対して31%の追加関税が課されることで消費者の購買意欲が冷え込み、時計業界の売上にも大きな打撃となる可能性がある。
この31%という関税率はアメリカがスイスとのあいだに抱える貿易赤字を根拠に算出されたものであり、スイスがアメリカ製品に対して課している関税とは直接の関係がない。加えてスイスの人口は1000万人未満であるのに対し、アメリカは約3億5000万人とその市場規模には大きな開きがある。さらにアメリカが公表する貿易赤字の数字は“モノ”の取引に限られており、サービスのやりとりは含まれていない。しかし実際にはスイスの人々はマイクロソフトのソフトウェアやNetflixといったアメリカのサービスを日常的に利用しており、この点は見過ごせない。
クリストファー・ウォードは2024年3月31日を期末とする会計年度において売上高が約3050万ポンド(日本円で約57億5000万円)となり、前年の約1700万ポンド(2024年のレートで約34億円)から大幅な増加を記録した。税引き前利益も約400万ポンド(日本円で約7億5000万円)と、前年の30万ポンド(2024年のレートで約6000万円)未満から大きく伸びたことが公的資料から明らかになっている。マイク・フランスCEOによれば、業界全体が需要の落ち込みに直面するなかでも同社は売上・利益ともに成長を遂げたという。
一方で、オーデマ ピゲの2024年の売上は約24億スイスフラン(2024年のレートで約4130億円)、ロレックスは約105億スイスフラン(2024年のレートで1兆8000億円)に達したと、アナリストやモルガン・スタンレーは推計している。フランス氏はスイスはアメリカとの関税交渉において有利な立場にあると考えており、その理由として「アメリカには守るべき高級時計産業が存在しない」点を挙げている。将来的には関税の引き下げや撤廃に向けた合意が成立する可能性はあるとしつつも、現政権が続く限り、何らかの関税が残るのは避けられないだろうという見方も示している。
現在のところ、アメリカの消費者が購入するクリストファー・ウォード製のブレスレットなどのアクセサリーは完成品の時計よりも価格がさらに上昇する見通しとなっている。これは、それらの製品が中国製であり、100%を超える高率の関税が課される対象となっているためである。こうした状況を受けてクリストファー・ウォードは、インド、カナダ、オーストラリア、シンガポールなどとの二国間貿易協定の締結をめざすイギリス政府の取り組みを支援しており、アメリカでの売上減を補う手段として期待している。
スイスの大手時計ブランドのなかにはアメリカ国内の販売店に一定の在庫を確保しており、当面は価格への影響を回避できるケースもある。しかしクリストファー・ウォードのように注文を受けてから商品を出荷するダイレクト・トゥ・コンシューマー(DTC)型のビジネスモデルを採用するブランドでは、即座にコスト増を価格に反映せざるを得なかったと、同社のCEOは説明している。
クリストファー・ウォードのCEO、マイク・フランス氏。
「市場と状況が落ち着くにつれて、需要が減少することは避けられないと考えています」と、クリストファー・ウォードの最高経営責任者、マイク・フランス(Mike France)氏はインタビューで語った。
コストパフォーマンスに優れたモデルを展開する同ブランドにとってアメリカは最大の市場であり、昨年出荷した約4万本の時計のうち45%以上の販売をアメリカが占めている。フランス氏はアメリカの消費者にとっての負担増は“定価の値上げ”というよりも、”アメリカ政府によって課された税金の適用”だと説明する。
「我々の基本的な販売価格は一切変わっていません。追加でかかるのは“税金”です。関税というよりも、アメリカ政府が課した販売に対する新たな税金と言ったほうが実態に近いと思っています」と述べ、続いて「その負担をブランド側で引き受ける余裕は、正直なところまったくありません」と付け加えた。
クリストファー・ウォードとseconde/seconde/による最新コラボモデル、ザ・トゥエルブ・スネーク(The Twelve Snake)。
マイク・フランス氏らは、クリストファー・ウォードをイギリス最大の時計ブランドへと成長させた。同ブランドはオンラインを通じた直接販売を展開し、チャイミングウォッチのベル カントや、一体型ブレスレットのスポーツウォッチであるザ・トゥエルブなど人気モデルを多数擁している。製造原価の最大でも3倍以内という手ごろな価格設定も、同ブランドの特徴だ。
一方、ロレックスをはじめとするスイスの大手時計ブランドは、先週発表された新たな関税政策への対応についてまだ正式な発表を行っていない。この関税は一度4月9日(水)から本格的に適用され、100以上の貿易相手国を対象とするアメリカの新たな貿易政策は世界中の株式市場を混乱させるほどの波紋を呼んだ。その後ほとんどの国を対象とした相互関税の90日間停止という発表がなされ、これにより各国は交渉の猶予を得た状態だ。なお、スイスのトップブランドのひとつであり、ロイヤル オークで知られるオーデマ ピゲは関税への対応を検討するための社内タスクフォースを立ち上げた。
「トランプ大統領による関税政策の発表を受け、社内タスクフォースが調整計画の検討を開始し、あらゆる選択肢を視野に入れている。最も重視しているのは、我々のチームと顧客を支援することだ」と、オーデマ ピゲの広報担当者は述べた。
クリストファー・ウォード トゥエルブ X
アメリカはスイス製腕時計にとって最大の市場であり、2024年には約44億スイスフラン相当(2024年のレートで約7568億円)の腕時計がアメリカ向けに輸出された。これは2023年より約5%の増加となっている。しかしこうしたスイス製品に対して31%の追加関税が課されることで消費者の購買意欲が冷え込み、時計業界の売上にも大きな打撃となる可能性がある。
この31%という関税率はアメリカがスイスとのあいだに抱える貿易赤字を根拠に算出されたものであり、スイスがアメリカ製品に対して課している関税とは直接の関係がない。加えてスイスの人口は1000万人未満であるのに対し、アメリカは約3億5000万人とその市場規模には大きな開きがある。さらにアメリカが公表する貿易赤字の数字は“モノ”の取引に限られており、サービスのやりとりは含まれていない。しかし実際にはスイスの人々はマイクロソフトのソフトウェアやNetflixといったアメリカのサービスを日常的に利用しており、この点は見過ごせない。
クリストファー・ウォードは2024年3月31日を期末とする会計年度において売上高が約3050万ポンド(日本円で約57億5000万円)となり、前年の約1700万ポンド(2024年のレートで約34億円)から大幅な増加を記録した。税引き前利益も約400万ポンド(日本円で約7億5000万円)と、前年の30万ポンド(2024年のレートで約6000万円)未満から大きく伸びたことが公的資料から明らかになっている。マイク・フランスCEOによれば、業界全体が需要の落ち込みに直面するなかでも同社は売上・利益ともに成長を遂げたという。
一方で、オーデマ ピゲの2024年の売上は約24億スイスフラン(2024年のレートで約4130億円)、ロレックスは約105億スイスフラン(2024年のレートで1兆8000億円)に達したと、アナリストやモルガン・スタンレーは推計している。フランス氏はスイスはアメリカとの関税交渉において有利な立場にあると考えており、その理由として「アメリカには守るべき高級時計産業が存在しない」点を挙げている。将来的には関税の引き下げや撤廃に向けた合意が成立する可能性はあるとしつつも、現政権が続く限り、何らかの関税が残るのは避けられないだろうという見方も示している。
現在のところ、アメリカの消費者が購入するクリストファー・ウォード製のブレスレットなどのアクセサリーは完成品の時計よりも価格がさらに上昇する見通しとなっている。これは、それらの製品が中国製であり、100%を超える高率の関税が課される対象となっているためである。こうした状況を受けてクリストファー・ウォードは、インド、カナダ、オーストラリア、シンガポールなどとの二国間貿易協定の締結をめざすイギリス政府の取り組みを支援しており、アメリカでの売上減を補う手段として期待している。
Posted by iraniabeja at
15:44
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